臨床工学技士になってはみたものの、この職業っていらなくない?
医療機器は使いやすいから誰でも使えるじゃん。
点検したってだれも見てないしさ。
こんな悩みに答えます。
今記事の内容
- 臨床工学技士はいらない?と思う3つの理由
- 臨床工学技士はいらない?そんなことはありません
- 必要とされる臨床工学技士になるための条件
世間だけでなく、病院内での認知度も抜群に低い臨床工学技士。
臨床工学技士って何?レントゲンとる人のこと?
と聞かれすぎて『看護師みたいなもの』と答えるようになってきた、12年目の臨床工学技士が書いています。
この記事を書いている人
・大学病院で12年勤務していた臨床工学技士。
・血液浄化・人工呼吸器・機器管理・委員会活動に取り組む
・現在は透析クリニック責任者
・現場経験は豊富です。
臨床工学技士が必要だなぁ。と思われるポイントは、業務領域が違っても共通するものがあります。
今まで体験してきた内容を例に、説明していきます。
>>よくみられる記事:透析室で使う薬を調べるならこれ!オススメ本3冊【読みやすい本を厳選】
臨床工学技士はいらない と思う3つの理由
- 臨床工学技士に業務独占はない
- 仕事が地味
- 病院内での立場が弱い
私が臨床工学技士はいらないんじゃない?と考えた理由です。
それぞれ説明していきます
臨床工学技士に『業務独占』はない
『業務独占』って知ってます?
簡単に説明すると、該当する資格がないと行ってはいけない業務です。
例えば、石なら「診断をする」「治療をする」ことで、医師以外は行うことができない業務です。
看護師は「診療の補助」業務独占ですし、薬剤師、放射線技師、理学療法士なども業務独占を持っています。
そんな中、なんと臨床工学技士には業務独占がありません。
つまり、法律的に「臨床工学技士がいないとできない業務はない」ということ。
ちょっと切ないですよね。
だから、多くの臨床工学技士が働く透析室も、看護師がいれば成り立ちます。
水処理装置や透析液の管理、機器のメンテナンスも法律的には、臨床工学技士だけができる仕事じゃないんですね。
臨床工学技士の仕事は地味
- 透析液の管理
- 医療機器の掃除
- 医療機器の点検・メンテナンス
臨床工学技士の仕事は医療機器の保守・操作。
患者さんと直接に関わらない業務も多いです。
特に医療機器の管理なんてめっちゃ地味。。
医療機器の汚れを拭いている時は、
「だれでもできるじゃん。」
と本気で思ったものです。
医療機器の操作についても同様。
人工呼吸器も透析装置も臨床工学技士以外も普通に使ってますよね。
操作が難しく、多職種が操作しないのは人工心肺やECMOくらいですかね。
臨床工学技士だけができる業務はないのです。
圧倒的に立場が弱い
病院内のとある光景・・
この患者さんの呼吸器設定はこうしましょうか。
う〜ん、ちょっと呼吸が合っていなそうですね。
先生!PEEPを調整するのはどうでしょうか?
そうなんですね、ちょっと考えてみましょうか。(こいつ、だれやねん。)
で、看護師さん、まずはさきほどの通りやってみましょう。
と、こんな空気を感じることもよくあります。(被害妄想かもしれませんが・・)
臨床工学技士は医療資格のなかでも歴史が浅いです。
- 資格者保持者の人数が少ない
- 病院内での人数も少ない
- 世間、病院内での認知が低い
挙げればキリがありませんが、とにかく認知度が低いです。
12年働いてきましたが、そこまで大きく認知度が上がった実感もありませんね。
臨床工学技士はいらない? そんなことはありません。
本当に臨床工学技士っていらないじゃん。
こう思いたくなる気持ちもわかりますがちょっと待ってください。
私が大学病院で12年働いてきて、「これだけは他の職種にはできない」と思うことがありました。
それは医療機器にトラブルが発生したときの対応です。
車を例に説明します。
車:医療機器
ドライバー:医師・看護師
車の運転って免許があればだれでもできますよね。
でも、こんなことが会ったらすぐに対応できますか?
タイヤがパンクした。
バッテリーがあがった
ていうかエンジンがかからない
すぐに
誰か・・助けて・・・
と、なりますよね。
そんなとき、さっそうと現れ対応する「JAF」の人。
めちゃくちゃカッコよく感じません?
そんな医療機器のトラブルに関する「JAF」の人、それが臨床工学技士です。
医療職はそれぞれに専門分野があり、臨床工学技士以外の医療職が医療機器について深く調べることは多くありません。
トラブルがなければ普通に使えますが、問題が生じると早急な対応は困難なことも多いです。
必要とされる臨床工学技士になるため条件
- トラブル対応の経験値を増やす
- トラブル現場を冷静に見る
- コミュニケーション能力をつける
とはいえ、臨床工学技士の資格をとれば、だれでも医療機器のトラブル対応をできるか?
というと、そんな簡単ではありません。
必要なのは上の3つ。
説明していきます。
トラブル対応の経験値を増やす
当たり前なようなことですが、トラブル対応の経験値を増やしましょう。
知識として知っていても、「分かったつもり」になっていることが結構あります。
例えば、夜間に「人工呼吸器の高圧警報がなってます。」とコールが来た場合。
新人の時と、経験を積んだ時で、対応結果は同じでも脳内の対応方法が違います。
新人の場合
- トラブル発生の連絡を受ける
- 現場に行く
- 状況を見てトラブル原因を推測
- 一つ一つ対応する
状況を見てから対応するので解決までに時間がかかることも多いです。
しかし、経験を積むとこんな風に対応可能になります。
ベテランの場合
- トラブル発生の連絡を受ける
- 現場に向かいながら、過去事例を含めてトラブル原因候補のあたりをつけておく。
- 状況を見てトラブル原因を確認
- 対応する
違いは、現場に行くまでの間にトラブルの原因候補を考えられているかどうか?
うまくいけば、現場についた瞬間に解決できます。
もちろん、現場状況を確認するまでは原因候補は推測でしかなく、違う場合もありますけどね。
しかし、その場合もすぐに次の原因を考えることができるので、解決までの時間短縮になります。
まだ経験年数が浅い方は、トラブルの対応を見学しておくだけでも2年、3年後の成長が違ってきますよ。
現場を冷静に見る
臨床工学技士が医療機器のトラブルで呼び出される場合、中には「これはさすがにないだろう」と考えもしなかった原因と思えるようなものも。
夜間に「トラブル対応してください」と呼び出された、実体験を紹介します。
ちょっと原因を考えてみてください。
- 人工呼吸器(BiPAP)の酸素濃度が上がらない。
- 除細動器の電源が入らない
- 人工呼吸器のアラームが鳴りやまない
・・・
・・・・・・
なんとなく、予想はできましたか?
正解の発表です。
- 酸素配管が壁アウトレットにしっかりと接続されていなかった。
- 取り外し可能なバッテリーが外れていた。
- 警報設定が適切ではなかった。
まさか〜、そんなのすぐに気づくでしょ!
と、思いますか?
確かに、落ち着いた環境ならすぐに気付くと思います。
しかし問題は、トラブル対応の場面は、緊迫していて冷静な心を保ちづらい環境が多いということです。
- 患者のSpO2が低下している真っ最中
- 除細動がすぐに必要な状態
気持ちが焦ると冷静な対応ができず、トラブル対応に時間がかかることもあります。
原因は難しいことばかりでなく、例のように簡単なことも多いので冷静さを保つことを心がけましょう。
コミュニケーション能力は必須
- 医師へ治療条件の提案
- 他職種へトラブル原因と対応方法を説明
- 日常業務の連携
臨床工学技士の業務は単独では成立せず、他職種との協力で成り立ちます。
いくら治療提案内容やトラブルの対応案に自信があり、妥当であっても相手に分かってもらえなければ意味がありません。
こうなってしまうと、口だけ正論の「めちゃくちゃ扱いづらい臨床工学技士」のできあがり!
正直、何人も見てきていますし、そうなってしまって職場を離れることにつながる人もいます。
そうならないためにもコミュニケーション能力向上は必須。
僕が心掛けているポイントです。
- 結論を先に伝える
- カンタンな言葉で理由を説明
- 丁寧な言葉遣いで
医療現場は時間のない人が多いです。
意見を提案するにも、周りくどい表現は聞いている相手に負担をかけ、途中で「で、なんなの?」と怒られたりすることもありますしね。
臨床工学技士はいらない? まとめ
臨床工学技士はまだまだ医療現場で影響力のある医療資格とは言い切れない状況です。
- 臨床工学技士に独占業務はない
- 仕事が地味
- 病院内での立場が弱い
ですが、医療機器に特化した専門家であるため他職種のこんな悩みに対応できます。
- 医療機器の使い方の提案
- 医師・看護師と治療条件の相談
- 医療機器の特殊なアラーム対応
- 緊急事態での医療機器対応
医療機器に対する緊急時の素早い対応が病院内での必要性を上げていく方法です。
そのためにも、緊急性のある現場では要点をすばやく確実に伝える技術が必要です。
参考になる本は「1分で話せ」。
この本では相手を動かす方法について書かれており、職種との関係だけでなく、患者さんや院内の委員会活動など、様々な場面であなたの武器になってくれます。
医師や看護師へ説明するのが苦手なんだよな~
という方には必須の1冊です。
コメント
コメント一覧 (1件)
こんばんは
ペースメーカ分野では臨床工学技士以外がプログラマを操作することはほぼないので、業務独占に近いと思いますよ。ニッチですけどね。