透析中の患者さんは体の外に血液が回り、血液から余分な水分を引かれている特殊な状況。
血液中の水分から取り除かれるため、結果的に体を流れる血液量が減って血圧が下がってしまうこともあります。
血圧が下がっているのに気がつかないと意識消失など大変な事態につながることも。
そのため、安全な治療を行うには血圧低下を早期発見し対応することが必要になります。
今記事の内容
- 血圧低下時の症状と対応
- 血圧低下を早期発見する方法
・透析室経験 12年
・臨床工学技士
・透析クリニック責任者
・外来から入院中の状態の悪い方まで、約1000人を超える患者さんの透析治療に携わってきました。
この記事を読めば血圧低下の症状にすぐ気づけるようになりますよ!
血圧低下時の症状
- 患者さんの訴え
- 足のつれ
- 生あくび・冷や汗
たまに見る症状
- 「お腹が痛い」、「トイレに行きたい」という訴え
- 嘔吐
- 意識消失
まれに見る症状
- 腕の痛み
- 体が熱くなる
血圧低下を起こした患者さんに現れる症状は様々。
「必ずこれが起きる」と特定するのは無理ですが、共通する症状もあります。
しかし、この共通する症状を知らないとどうなるか?
と言って血圧低下の兆候を「スルー」ってこともあり得りえます。
なのでまずは知っておきましょう。
大事なのは共通する症状を知った上で患者さんの観察を行うことです。
よく見る症状
血圧低下時に出現する症状はよく見るものからまれに見るものなど様々。
それぞれ紹介していきます。
- 患者さんの訴え
- 足のつれ
- 生あくび・冷や汗
✅ 「なんか変」「気持ち悪い」という訴え
血圧が下がると違和感を感じることが多いので、患者さんの訴えは血圧低下に気付く大事なサイン。
早期発見にとても役立つのですが、必ず患者さんの訴えがあるわけではありません。
患者さんの中には少しでも異変を感じたら教えてくれる人から、我慢してほとんど言わない人。
異変かどうかがわからなくて言えない人など様々な方がいます。
患者さんの性格に合わせて、こちらから声をかけてみましょう。
「患者さんは異変を感じたら教えてくれる」
と思わない方が安全です。
[aside]
- すべての患者さんが声をかけてくれるとは限らない
- なんか変なのかな?どうなのかな?と考えていて声をかけない方もいる
[/aside]
対応例
- 足を上げる
- 透析液温度を下げる
- 除水速度を調整する
- 補液する
✅ 足のつり
足のつりは人によってはかなり強く出ます。
痛みのあまり我慢できずに安全な治療を妨げることもあるので、起きないようにすることが望ましいです。
対応例
- 除水速度を下げる・止める
- マッサージ
- 温める(低温やけどに注意)
- 芍薬甘草湯を内服
✅ 生あくび・冷や汗
血圧が大きく下がっているときにでやすい印象です。
患者さんが異変を感じながらも我慢している。
もしくは、「なんか変」だと思ってはいるがスタッフに言おうか迷っていると、症状が出現してスタッフに発見されることが多いですね。
対応例 速い対応が必要なことが多い
- 足を上げる
- 補液する
- 除水をいったん止める
たまに見る症状
頻度は高くないものの、血圧低下をした時に現れる症状です。
- 「お腹が痛い」、「トイレに行きたい」という訴え
- 嘔吐
- 意識消失
✅ 「お腹が痛い」「トイレに行きたい」という訴え
この訴えを聞いた場合、まずは血圧低下がないか確認しましょう。
なぜかというと、血圧が結構下がっているときにでやすい症状だからです。
特に「早くトイレに行きたい!」という訴えだけを聞いて一時離脱をすると、トイレに行こうと立った途端にいっきに血圧が下がる場合があるので要注意です!
対応例
- まずは血圧を測る。
- 血圧が下がってないようならトイレに行くのを検討
- 血圧が下がっているなら補液などの対応
- ベッド上での排泄を促す
✅ 嘔吐
嘔吐物がのどに詰まり、呼吸を妨げる可能性があります。
呼吸を確保するためにすぐに体を横に向けましょう。
対応例
- 体を横に向ける
- 補液
✅意識消失
かなり血圧が下がっており危険な状態で、いわゆるショック。
だんだんと血圧が下がっていき意識消失するときもあれば、人によってはナースコールを鳴らしたり声を出す間もなくいっきに進行する場合もあります。
急な意識消失をする方に関してはそばにいないと気づけない場合もあります。
普段の落ち着いた状況でも治療中の観察を怠らないことが必須です。
対応例
- 足を上げる
- 補液
- 肩を叩いて声をかける
まれに見る症状
誰でも出るというよりは、特定患者さんの血圧が下がった場合に決まって出る症状。
という場合が多い印象です。
- 腕の痛み
- 体が熱くなる
✅ 腕や血管の痛み
経験上、治療の途中で腕の痛みを訴える場合、血圧低下をしていることが多いです。
訴えを聞いた場合は血圧を測ってみるといいと思います。
対応例
- 血圧を測る
- 腕を温める
✅ 体が「か〜っ」と熱くなる
あまり多くはないのですが訴える方もいます。
経験上、大きく血圧が下がった場合によく聞かれます。
対応例
- 足を上げる
- 補液
血圧低下を早期発見する方法
- 患者さんの傾向を知っておく
- ベッドサイドにいる
- ブラッドボリューム測定
治療を安全に進めるには、ある程度予測を立てておくことも必要です。
過去治療の傾向を知っておく
患者さんによって血圧が下がった時の症状のでやすさに偏りがある場合もあります。
出現する症状の傾向を意識することも有効だと思います。
他に大事なのが除水に関する過去の情報。
透析中の血圧低下は体から水を引く速さが早かったり、多く水分を引いた時に起きやすいです。
そのため、患者さん一人一人の過去の透析中情報を把握しておく必要があります。
今日は600ml/minで引かないとDW行かないから設定するけど、今日は要注意かな?
と注意できます。
ベッドサイドにいる
ただし、症状を知っていても血圧が下がってきている患者さんを発見できなければ意味がありません。
- 声やナースコールを押さない患者さんもいる
- 患者さんの顔色やしくさで血圧低下に気づくこともある
- 全く予想外に血圧低下を起こすこともある
- 人しれず意識消失していることもある
こんな状況もよくあるので一番の予防は患者さんのそばで観察を続けることです。
ブラッドボリューム測定
透析中の除水に伴う循環血液量の低下を推測する機能です。
割と色々なメーカの装置についているので目にする機会の多いはず。
ブラッドボリュームの低下(変化)は患者さん全体に当てはめることはできません。
例)みんなBVが-10%になったら血圧が下がる。→これは成り立たない
ですが患者さんごとに見ると傾向があることもあります。
注意してみよう!!
こんな使い方ですね。
安全な治療につなげる一つの材料にしましょう!
透析中の血圧低下 まとめ
今記事のまとめです。
血圧低下時の症状
- 患者さんの訴え
- 足のつれ
- 生あくび・冷や汗
- 「お腹が痛い」、「トイレに行きたい」という訴え
- 嘔吐
- 意識消失</li
- 腕の痛み
- 体が熱くなる
透析治療は少なからず体に負担をかけます。
そのため、いつも落ち着いている人であっても絶対に何もないとは言い切れません。
血圧低下の代表的な機序などがまだ??な人はこちらの本を読むとより理解できるようになります。
安全な治療をするために「常に血圧低下は起こるもの」と考えて、すぐに動ける準備をしながら行動したいものですね。
それでは!
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